「サイン デザイン ライフライン」 ~障害のある方にとってのサイン、デザインはライフライン(安全に移動するための生命線)~

2025年4月19日、令和6、7年度の協働提案事業となったNPO法人グローイングピープルズウィル(以下GPW)の2年目の事業に参加してきました。
GPWは、主に視覚障害者の地域生活を支える活動を行っているNPO法人です。
今回提案した事業名は「住民(移動制約者)参加によるユニバーサルデザインのまちづくり 実りある対話を行う」というものです。
「対話とまちづくり?」と思われる方も多いかもしれません。まちづくりでは、色々な方の意見を聞いて行われていますが、まだまだ「移動制約者」と言われる方たちの意見が十分反映されているとはいいがたく、建物や道路ができた後に修正されることも多いようです。考えてみれば、つくる前に話し合ったり、実験したりすれば、つくり直したり、修正したりするより、時間もお金も使わずに済むというわけです。

さて、今回は、中央大学研究開発機構教授 秋山哲男さんの『杉並区におけるユニバーサルデザイン』というテーマのお話を伺ってきました。

都市計画そのものが「平均値の都市」から「多様性のある都市」を目指すようになってきた現在、そこに住み暮らす人々の移動の多様性についても考えられるようになってきています。
協働提案のなかに「移動制約者」という言葉があります。 聞いたことがあるでしょうか。 この「移動制約者(移動困難者)」とは、心身の機能の障害や低下などで一般の人より移動に困難を抱える人のことを指します。障害がある方だけでなく、妊産婦、高齢者、あるいは大きな荷物を抱えている人たちもそう考えられます。そして、それぞれの方たちの移動の困難の理由は違います。例えば、視覚に障害のある方の移動には、通称点字ブロックは欠かせませんが、車いすの方たちにとっては点字ブロックの凸凹が邪魔になるということも考えられます。一口に移動に制約がある方といっても様々な方たちがいるわけです。その解決には対話が欠かせません。
当然移動だけでなく建物内にもいろいろな困難があり、ガイドラインや計画なども整備されてきています。
今回の講座では、トイレ、階段、エスカレーター、道路などそれぞれの事例を学ぶことができました。
例えば道路の幅員の確保のこと、車いす使用者用駐車施設のこと、階段の踊り場のこと、エレベーターのかごの大きさのこと、いろいろな事例を伺う中で、気づかずに過ごしていることがいかに多いかに気づきました。
「そういえば、エスカレーターの水平部が3枚であることが増えてきて乗り降りが楽になっている」と思い当たりました。これもバリアフリーの一環です。

また、街中にたくさんあるサインについてのお話もありました。最初につけたサインが分かりづらかったり、見えづらかったりで、次々に付け加えられるサインを「野良サイン」というそうですが、たくさんあることで気づきやすくなることもあれば、逆にわかりづらくなったり、本当に必要な人に届かなくなったりする場合があるようです。必要で見やすいサインとは何か、最初に考えていかないといけないし、その場合、必要としている人たちの意見を聞いていかなければいけないと思いました。

講座を聞いた帰り道、「知ることは、障がいを無くす」というポスターを見かけました。
視覚障害のある方の移動に関する課題を整理すると、建物や施設、機器だけでは不十分で人的な支援が必要だというお話もありました。他者にやさしいまちは、よいまちになる。杉並区は協働提案事業を通して、一歩近づいているのではないでしょうか。

触図(触って確かめる地図)
わかりづらいかもしれませんが、黒い壁の部分が盛り上がっています。
視覚に障害がある場合、空間認知の手助けの一つになります。
高井戸駅前の工事中の歩道橋でみかけたポスター
高井戸駅前の工事中の歩道橋で見かけたポスター

写真・文責:朝枝