2024年12月14日(土)、阿佐谷地域区民センターにて開催された、杉並郷土史会主催の「荻外荘を通して考える建築復原の意味」という歴史講演会に参加してきました。
2024年12月9日に一般観覧が開始されたばかりの、荻窪三庭園の1つである「荻外荘」をテーマに、復原の意味を、事例を通して考える講座でした。
受付を済ませ、会場に入ると、既に多くの参加者が集まっていて、全員で50名ほど参加していました。予約は不要で、先着順に参加ができるというところが、足を運びやすく、この講座の魅力の1つです。
この日の講師は、東京大学工学系研究科建築学専攻技術専門職員である角田真弓先生でした。
角田先生は、古写真から歴史を読み解いていく研究をしながら、数々の文化財の復原に携わっています。
「荻外荘」はもともと、1927年(昭和2年)伊東忠太の設計により、入澤達吉(明治から昭和期にかけての内科医で大正天皇の侍医)別邸として建設されました。その当時は、「楓荻荘(ふうてきそう)」と呼ばれていましたが、その後、1937年(昭和12年)に、内閣総理大臣を3度務めた政治家・近衞文麿(このえふみまろ)が、購入し、近衞の後見人であった西園寺公望により、「荻外荘」と名付けられました。実に、1937年(昭和12年)の第一次内閣期から20年(1945年)12月の自決に至る期間を過ごし、昭和前期の政治の転換点となる重要な会議を数多く行った場所で、2016年(平成28年)には、国の史跡に指定されました。
杉並区は「荻外荘」を近衞文麿居住当時の姿に復原整備し、区立公園「荻外荘公園」として現在公開中です。
https://ogikubo3gardens.jp/tekigaiso/
さて、この荻外荘の復原は、大変な事業でした。というのも、1960年(昭和35年)に、応接室を含む木造平屋建ての約半分202平方メートルが、東京都豊島区巣鴨にある天理教東京教務支庁の敷地内へ移築され、それを杉並区荻窪へ戻すという一大プロジェクトだったからです。
角田先生は、ここで重要なことは、いつの時代に復原するのか、とのこと。この屋敷は、近衞文麿が買い取ったのち、別棟・蔵・設備など、暮らしに合わせて大幅に改築されていました。
角田先生は、「復原には、どこに価値を見出すのか」が重要だと仰います。結果、荻外荘会談の行われた昭和16年に重きが置かれ(書斎のみ昭和20年)、その時代のものに復原されることとなったそうです。つまり、伊東忠太の設計の建造物としての文化財ではなく、史跡としての文化財に価値を見出した、ということです。
そして、角田先生より、「復原」と「復元」の違いについても教えていただきました。
・復原・・・修理や改造により変わった姿を元の状態に戻すこと
・復元・・・失われた姿を「かつての姿」で建設すること
つまりは、荻外荘は、「復原」であることを学びました。
最後に、近代建築における復原・復元例を写真と共に紹介していただいたので、とても分かりやすく、勉強になりました。
講座終了後、杉並郷土史会代表の寺田史朗会長にもお話を伺いました。
「杉並郷土史会は、郷土史を正しく・楽しく学びあう会です。日頃、目にしているマチの風景の中にも歴史が隠れています。それに気づき、郷土愛を深め、次世代へとつなげていく活動をしています。老若男女問わず、ぜひ講座へ足を運んでいただき、私たちの仲間になりませんか?講座にて「入会のご案内」をお渡ししています。どうぞお気軽にお越しください」とのことです。
杉並郷土史会は、街歩きも開催しています。イベントや講座情報は、すぎなみ協働プラザをはじめ、区民センター等の区内施設にもチラシを配架しています。ぜひお手に取ってご覧ください。
ほかにも、杉並郷土史会ホームページでも講座のご案内をしていますので、是非ご確認ください。
杉並郷土史会ホームページ https://member.sugi-chiiki.com/rekishikai
文責・写真 大庭
【杉並郷土史会 講座予定】
以下の歴史講演会は、事前予約不要・当日先着順80名、参加費:一般700円、会員500円です。(2025年1月現在)
2025年1月18日(土) 歴史講演会『浮世絵「恵方参りの図」と妙法寺』
場所:阿佐谷地域区民センター
時間:13時30分-15時30分
講師:寺田 史朗 (杉並郷土史会 会長)
2025年2月15日(土) 歴史講演会「府中の事件にみる江戸時代の社会」
場所:阿佐谷地域区民センター
時間:13時30分-15時30分
講師:花木 知子 先生(府中市郷土の森博物館 学芸員)
2025年3月8日(土) 歴史講演会「江戸西郊の武蔵野開発について」-近年の研究成果を紹介しながら-
場所:高井戸地域区民センター
時間:13時30分-15時30分
講師:米崎 清実 先生(法政大学兼任講師)
【杉並郷土史会 会員の募集】
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「何かを始めてみたいとお考えの方、地域に根差した生活をお考えのあなた、日々の生活が違って見えるヒントが見つけられるかもしれません。一度覗いてみませんか。勿論、歴史に興味のある方も大歓迎です。」
(杉並郷土史会会長 寺田史朗)
お問合せメールアドレス:stkyodo@jcom.zaq.ne.jp 寺田史朗