2023年 健康に関する最新情報

2023年に発表された健康に関する最新情報は下記の通りです。

(1)アルツハイマー病治療新薬「レカネマブ」が2023年9月23日に国内承認され、12月20日から販売が開始され患者への投与が始まりました。

厚生労働省の調査よると、我が国は高齢化に伴い65才以上の認知症高齢者は、2025年に約675万人(約5人に一人)と予測されています。

認知症には、アルツハイマー型、脳血管性型、レピー小体型、前頭側頭型の4種類があり、その中でもアルツハイマー型が全体の約6~7割を占めていおり、65才以上で発症リスクがますます高まる傾向にあります。

アルツハイマー型認知症は、脳内のアミロイドβ(ベータ)と言う異常なタンパク質が脳内に蓄積して脳の細胞が死滅し、脳が萎縮し、記憶障害が現れる症状で、時間や場所がわからなくなる見当識障害、判断能力や言語の理解力の低下などが現れます。

   その進行度は「前期・初期・中期・末期」に分かれ

「前期」では、軽度認知障害(MCI)と診断され、放置すると症状が進行するので、医者と相談して治療することが望まれる。

「初期」では、同じことを何度も尋ねる、日付や曜日がわからなくなるなど、記憶力 が低下するので、生活において周囲の気遣いが必要になってきます。

「中期」では、食事をしたことを忘れる、着替えやお金の払い方がわからなくなる など、日常生活に支障をきたし、サポートを必要とする場面が多くなります。

「末期」では、排便や歩行が困難になり、徐々に寝たきりの生活になって行きます。

治療新薬「レカネマブ」は、上記「前期」の軽度認知障害、又は「軽度の認知症」と診断される段階で投与されるもので、脳内のアミロイドβ(ベータ)に直接働きかけることで神経細胞の破壊を阻止し、認知症状の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることが出来ます。高齢者は、おかしいと思ったら、早期に医者の診察を受けて、どう対処するか決めることをお勧めします。

ただ、新薬「レカネマブ」は使用開始されたばかりであり、実用化に向けて下記の問題を解決することが必要となっております。

①検査費用については、脳内にアミロイドβ(ベータ)が蓄積されていることを確認する必要がありますが、その検査は、現在、下記の2つの方法に限られております、

・放射性薬剤を体内に投与し、分析を画像化し検査を行う「アミノイドPET検査                                      ・局部麻酔を行い、腰に針を刺し、脳脊髄を採取し検査を行う「髄液検査」

上記の「アミロイドPET検査」は、費用が1回当たり約20万円~60万円と高価です。「髄液検査」は保険が適用され、1回当たり約3万円と比較的安価ですが、局部麻酔は身体への侵襲性があります。

②治療費については、新薬「レカネマブ」による治療は、2週間に1回投与し、1年半をめどに継続され、期間が長く生活に影響があります。治療費用は、年間約298万円で、公的保険、「高額医療制度」適用により、外来で年間約14万4443円の負担となります。(米国では、一人当たり年間約380万円の自己負担になっています)。

(2)高齢者の居場所づくり、即ち、「食」を通じた交流支援場所づくり、が各地に広まりつつあります。

一人暮らしの高齢者が増加する中、地域の高齢者が集まり、飲食しながら交流する「シニア食堂」が各地に広まりつつあります。

東京都は今年度(令和5年度)、シニア食堂の事業推進に乗り出しました。高齢者の孤立を防ぎ、心身の健康推進につなげてもらうことが狙いです。同事業では、シニア食堂1か所当たり最大65万円を支給し、会食に加え、健康講座の開催や多世代交流の場なども補助対象に含めると言うことです。すでに、目黒区、荒川区、奥多摩町に交付されました。

目黒区は区立特別養護老人ホームなどで「高齢者会食サービス」を開催しており、1食400円で、現在6か所で週1~2回実施しております。

荒川区では、2事業者が食堂を運営しており、1食400円で月4回開催しております。

奥多摩町では、65才以上の高齢化率が50%を超える町として、2つの自治会が20人以上が飲食や交流を楽しんでおります。

今後、この活動が全地域に広まり、高齢者の生活が支援されることが望まれます。

(3)政府は2023年12月22日、現行の紙の健康保検証を2024年12月2日に廃止すると決定しました。

廃止日から1年間は、紙の保険証を並行して使用できますが、1年後は「マイナンバーカード」のみを保険証として使用することになります。まだ「マイナンバーカード」を取得していない高齢者はできるだけ早く取得する必要があります。

(4)介護施設の住居費が、2024年8月から、月1800円引き上げられます。

厚生労働省は、12月27日、昨今の光熱水費の高騰を踏まえ、特別養護老人ホー ム(特養)などの介護施設の住居費を月1800円程度引き上げる方針を発表しました。特養の月々の住居費は、「ユニット型個室」は約6万1000円、相部屋(多床室)は約2万6000円となっていますので、それらが月1800円程度引き上げられると言うことです。

施設利用者は、住居費の他に、サービス利用料(1割負担)、食費を負担する必要がありますが、働く人の最低賃金がアップされること、食材費アップにより食費負担が2024年度から30円アップすることが決まっていますが、介護サービス料金の値上げに備えて、生活設計をしっかり見直す必要があります。

(5)新型コロナウイルス感染症の感染症分類が、結核などと同様の「2類」相当から、季節性インフルエンザなどと同様の「5類」へ2023年5月8日付けで移行しました。

①政府が関与した仕組みから自己の自主的仕組みに変更となりました。       ②マスクの着用は個人判断となり、2023年10月より、ワクチン接種、治療薬や入院医療費も公的負担から自己負担に変更となりました。              ③ワクチン接種は、2024年から定期接種となり、費用は一部自己負担となります。④新型コロナウイルス治療費の自己負担上限は、1割負担の方は3000円、2割の方は6000円、3割のかたは9000円となります。高額医療制度が適用されます。

文  責: 高橋 昭浩(当法人職員) 健康管理士上級指導員          参考資料:  「ほすぴ」 発行者 日本成人病予防協会、その他公開情報             

健康の話  自律神経について

既に掲載した「健康の話 細胞について」で、健康の基本は、“自分自身が、身体を形成している最小単位である「細胞」が喜ぶ生活をすることである”旨説明しましたが、今回の「健康の話 自律神経について」では、その生活に大きく影響を与える”自律神経、即ち、交感神経と副交感神経”について説明します。

人間には生命を維持するために、即ち、「細胞」が喜ぶ生活をするために必要な基本的身体条件(健康診断検査項目の正常な数値、自律神経の正常なバランス、各器官の正常な働き等)がもともと身体に備わっています。そして、その身体条件を変えるような気象条件、生活環境が発生すると、交感神経(体の機能を興奮モードにする)と副交感神経(体の機能を鎮静モードにする)、が頻繁に切替わりバランスを取り正常な身体条件を保つように働きます。それによって「細胞」が喜ぶ生活が保たれ、生命が維持されています。

しかし、気象条件、生活環境の変化が頻繁に発生することによって、交感神経と副交感神経が過度に切替わるようなことがあると、バランスが乱れ、いらいら、不眠、内臓機能の低下、消化機能の低下、食欲不振、免疫機能の低下等により、身体のだるさ等身体の不調を感ずるとともに風邪、インフルエンザに掛かり易くなります。

そこで、四季おりおりの気象条件、生活環境の変化を理解し、それら変化に対する交感神経と副交感神経の作用と身体への影響を理解し、適切な対策(予防、軽減、そして乱れを安定させる対策)を講ずることによって、年間を通して安定した健全な生活を維持することが可能になります。

以下にその内容を解説します。

【1】自律神経、即ち、交感神経と副交感神経

興奮モードを担い、主に日中にもともと優位となる交感神経と、鎮静モードを担い、主に夜にもともと優位となる副交感神経は、日々の気象条件、生活環境の変化に対応して頻繁に切替わりバランスを取り自動調整して、基本的身体条件を守っています。

しかし、両神経がバランスを乱し、調整機能を失ったりすると基本的身体条件に変動をきたし、身体の不調を感じたり、発病したりすることになります。

気象条件、生活環境の変化に伴う交感神経と副交感神経の各器官への作用をまとめると下記の通りです。

自律神経
器官
交感神経副交感神経
(気分)緊張、興奮リラックス
血管収縮させる拡張させる
血圧上げる下げる
汗・
鳥肌
汗を分泌し体温を下げる(暑い時など)鳥肌を立てて熱の放出を防ぐ(寒い時など)
心臓脈拍を早くする脈拍をゆっくりする
気管広げる狭くする
胃腸働きを抑える活発にする
呼吸早くする遅くする
排便・
排尿
抑制する促進する
消化消化液の分泌を抑え、抑制する消化液の分泌を高め、促進する
瞳孔拡大し、涙の分泌を抑制する収縮し、涙の分泌を促す
唾液量を少なくする量を多くする

【2】季節の気象、生活環境の変化、及び変化に伴う自律神経の作用と身体への影響

春は3月~5月の期間を言い、「春分の日」頃から冬のきびしい寒さが終わり、だんだん温かくなり、桜が咲き、草花が芽生え、身体も心も軽くなるような爽やかな季節であると言われていますが、実は、気温の寒暖差、気圧の変動、及び生活環境の変化が頻繁に発生し、交感神経と副交感神経の切替えが頻繁に行われ、バランスが乱れ安い時節と言えます。 (1)初春は「3寒4温」と言うように高気圧によりポカポカ暖かい日になると思えば、一転して低気圧により寒い日になり、その後、いわゆる「春一番」により急に気温が上昇したり、「春の嵐」と呼ばれるように、強い雨が降ったり、強い風が吹いたりします。このようにこの時期は気温・気圧の変化が頻繁に起こります。 かかる気温・気圧の頻繁な変化に対応して、両神経の切替えが頻繁に続くため、調整機能のバランスが乱れ易くなり、体の不調を感じ易くなります。 (2)5月になると高気圧が張り出してきて温かく澄み渡った青空になり、からっとした「五月晴れ」が多くなります。この時期は副交感神経が優位となりリラックス状態が続き、体調もよく、ゆったりした気分になります。 ただ、この頃から冬の夜長が短くなり、朝明けが早くなり、「春眠暁を覚えず」と言うように 寝不足を感ずる日が多くなり、それがストレスとなって交感神経が必要以上に高まり、結果として体調不良を感じ易くなります。 (3)また、3月の年度末には、卒業、入学、入社、異動、転勤という生活環境の変化が多くな り、人との接触が増え、喜怒哀楽の感情の起伏も多くなり、交感神経と副交感神経の切替えが頻繁になり、バランスが乱れ易くなり、体調を崩し易くなります。
         夏は6月~8月の期間を言い、じめじめした梅雨期が終わると、高温、高湿度の太平洋高気圧が張り出し、気温が急速に上昇し、蒸し暑い猛夏が到来します。 冷房の効いた快適な室内と猛暑の屋外を頻繁に出入りする生活が続くとともに冷房の効いた室内に1日中のほとんどを過ごすことが多くなります。 頻繁な出入りにより両神経が頻繁に切替わることによってバランスを乱し易くなり、また、涼しい快適な室内に長く滞在することによって両神経の体温調節機能が緩慢になり、内臓機能の低下により身体の不調を感ずるととも、免疫機能の低下により夏風邪、インフルエンザを発病し易くなります。 更に、高温で湿度が高い日は、熱が体中こもり「熱中症」を発症し易くなります。 また、夏の風物詩である花火大会、盆踊り、夏祭り等に加え、海水浴、山登り等の野外活動が活発になり、喜怒哀楽の感情によって交感神経が必要以上に刺激されます。そして、夕方になっても収まらず、夜に優位であるべき副交感神経より優位の状態が続くと両神経の調整バランスが乱れ、身体の不調を感ずるとともに、夏風邪、インフルエンザを発病し易くなります。
             秋は9月~11月の期間を言い、「女心と秋の空」の諺のように、初秋は、晴れと雨を繰り返す変わり易い天候が続き、時には「秋の長雨」となります。また、9~10月に伊勢湾台風のような大きな「秋台風」が到来しますが、それが過ぎると、すがすがしい、「小春日和」、「秋晴れ」が続き、「天高く馬肥ゆる秋」、「実りの秋」、「食欲の秋」が到来します。台風の時期を除けば、秋は気温、気圧、湿度ともに安定した日々が多く、旅行などの外出、「秋祭り」等生活環境がざわつくこともありますが楽しさが勝り、気分の良い日々が続き、交感神経と副交感神経がバランス良く働き、一年中で最も自律神経が安定する時節となります。 ただ、11月になると、「秋冷え」となり、「木枯らし」が吹き始めます。寒さが身に染みる日々が続くと、交感神経が働き、血管を収縮させ、血流を抑え体温が奪われないように働き、夜になっても副交感神経を上回る場合は、両神経のバランスが崩れ、体調の不調を感じ易くなります。
冬は12月~2月の期間を言い、1年で最も寒さが厳しくなる季節です。屋外は寒いが屋内は暖房で温かく、頻繁な出入りによって、両神経の切替えが頻繁に行われ、バランスを乱し易くなります。また、クリスマス、年末・新年を迎え生活環境がざわつくとともに飲み過ぎ、食べ過ぎによって消化機能が乱れや易くなります、また、人混みの中に滞在する機会も多くなり、交感神経が強く働き、両神経のバランスが乱れ易くなります。それらによって、不眠を引き起こし、身体の不調を感じ易くなるとともに風邪やインフルエンザに掛かり易くなります。

【3】自律神経のバランスの乱れを予防し、軽減し、乱れを安定させる対策

春、夏、秋、冬いずれの季節においても、気温・気圧・湿度の高低の変化が発生しますが、その変化が頻繁に起こると自律神経(交感神経と副交感神経)の作用が乱れ、いらいらしたり、不眠になって、内臓機能が低下、消化機能の低下、食欲の減少を引き起し、その結果エネルギーが減少し身体がだるくなったり、疲労感を強く生ずるとともに抵抗力が低下し風邪やインフレンザに掛かり易くなることについては、既に、ご説明した通りです。   そこで、お気付きのことと存じますが、「四季を通じて発生する交感神経と副交感神経の乱れをいかにして防ぐか、軽減するか、また、乱れを安定させるか、適切に対策を講ずること」が重要なポイントであると言うことがお分かりのことと存じます。   重要なポイントとなる主な対策をまとめると下記の通りですが、体験からもそれほど難しいことではなく、容易に行うことが可能と思われますので、出来る範囲で早速始めていただきたく存じます。                (1)3食を必ず取ること。  
朝食:洋食、和食いづれでも結構ですが、ただ、量は軽めが望ましい。  
昼食:洋食、和食いづれでも結構ですが、しっかり食べたほうが良い。尚、発酵食品(例えば、ヨーグルト、納豆)、及び野菜をメニューに加えること。
夜食:好きな食べ物で消化の良いものを食べ過ぎないように取ること。食後、白湯を一杯飲むこと。尚、食後、お茶などの飲み物を飲む習慣の方は、お茶碗、グラスに1~2杯程度とし、頻尿を避けるためにも飲み過ぎないようにすること。 
(2)寝る前に、ゆっくりお風呂に入ること  
日中には気象条件、生活環境の変化によって交感神経と副交感神経の作用に乱れを生ずることが多いので、寝る1~2時間前に湯温38℃~40℃のお風呂に、10分~15分間ゆったりした気分で、半身浴すること(半身浴では物足らない方は、どっぷりつからず、せいぜい肩が出る程度までつかることをお勧めします)。入浴直後に、グラス1杯の水を飲むこと。 これによって、乱れていた両神経のバランス機能が戻るとともに、夜には優位となる副交感神経が正常な状態になります。
(3)睡眠を十分に取ること。
入浴後、20分~30分程度ゆっくり休み、体温が下がる前に布団に入ること。副交感神経が優位となり体温が下がり始め眠くなります。最低3時間の熟睡を含め6時間の睡眠を取るのが望ましい。寝付かれない場合や途中目が覚めた場合には、布団の中にそのまま横になって眠くなるのを待つこと、その間音楽を聴いたり、ラジオを聴いてもよいし、読書が良い方はそれでもよいが、睡眠を誘うような難解なものが良い。
(4)5,000歩~8,000歩のウオーキングを行うこと(高齢者は1万歩を超えないようにすること)。毎日が望ましいが、週2~3日でもよい。  周りの景色を眺めながら、きれいな花があれば美しさを感じながら普通の速度で、若干大股で歩くように努めること。ただし、靴はウオ-キング用のものを購入し履くこと。
(5)腹式呼吸を行うこと、そして身体の右側を下にして寝ること。  
布団に入った時、3秒程を掛けて鼻または口から腹を膨らませながら空気を吸い込み、そのまま3秒ほど息を止めて、6秒ほどかけて腹をへこませながら空気を吐くこと、5回程度行うこと。 これによって、副交感神経が活発化し、睡眠に入り易くなる。 また、その後、身体の右側を下にして寝ることによって、呼吸がし易くなり、熟睡し易くなる。
(6)時間を見つけて、下記事項を行うように努めること。  
好きなことを行うこと(好物を食べる・のむ、好きな映画・TVを見る)、笑うこと(落語を聞く、笑えるTVを見る)。公園などでボーとすること。気の合う人と会話すること。冷たいものや甘いものを取り過ぎないこと。長く室内で過ごす場合は、ときどき窓を開けること。座りっぱなしが続く場合、時々立つ・歩く・ストレッチを行い身体を動かすこと。  
                 
文  責 :高橋 昭浩(当法人職員)  健康管理士上級指導員
参考資料:・「ほすぴ成人病予防対策協会発行 ・その他公開情報                    

40年ぶりの民法改定! 人生設計への影響は!

40年ぶりの民法改定 人生設計への影響は

4年前の2018年7月に、約40年ぶりに民法が改定され、その中の”相続に関する規定(相続法)”の大幅改定、および新設が行われ、2019年から今年にかけて順次施行されています。
特に注目すべきポイントは9つあり、何が、どう変わったか、ご説明します。

皆様に於かれては、コロナ渦で精神的に余裕がない状態であろうと存じますが、老後の人生設計に重要な事項ですので、この際、理解し、記憶にとどめていただきたく存じます。

【「自筆証書遺言」の要件緩和】
1.法務省令で定めた様式に従って書いた遺言書(「自筆証書遺言」)は、法務局で低額な費用で安全に管理・保管できるようになりました(法務局における「自筆証書遺言」の保管制度の新設)。(2020年7月10日施行)
2.法務局で保管された「自筆証書遺言」は、開封時に裁判所の「検認」が不要になりました。(2020年7月10日施行)
3.「自筆証書遺言」に添付する財産目録は、パソコンで作成することが可能となるとともに、通帳等の証拠書類の写しを添付して作成することも可能となりました。(2019年1月13日施行)
【配偶者の住居に関する権利の拡大】
4.配偶者に居住権が認められ、被相続人の死後、これまで住んでいた自宅(土地と家屋)に、終身又は一定期間そのまま無償で住むことが可能になりました(配偶者居住権の新設)。(2020年4月1日施行)
5.結婚期間が20年以上の夫婦間の住居用不動産の生前の遺贈・贈与は、遺産の先渡し(特別受益)の対象外となりました。(2019年7月1日施行)
【相続の円滑化】
6.遺留分を侵害された者は、遺贈・贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金額を請求することが可能になりました。また、遺贈・贈与を受けた者が直ちに支払いを準備することができない場合は、裁判所に支払期限の猶予を求めることが可能になりました。(2019年1月13日施行)
7.遺産分割前に、被相続人の預・貯金から必要経費を引き出すことが可能になりました(預・貯金の払い戻し制度の新設)。(2019年1月13日施行)
8.被相続人(例えば、夫の親)の介護や看病で貢献した相続権を持たない親族(夫の配偶者)は、相続人(夫等)に貢献の対価として金銭を請求することが可能になりました。(2019年7月1日施行)
【成年年齢の引下げ】  
相続には直接関係はありませんが、成人年齢が引き下げられました。9.成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられました。これによって、女性の結婚年齢が16才から18才に引き上げられ、男性の結婚年齢が20才から18才に引き下げられました。(2022年4月1日施行)

上記の各項目に関して、下記の通り解説します。

1.これまでは、本人が自由に遺言書を作成し、自宅のタンス等に保管する方法、および公証人に依頼して遺言書を作成し、公証人役場に管理・保管する方法(「公正証書遺言」)がありましたが、今回、法務省民事課が「遺言書の様式の注意事項」として公表した作成方法で本人が遺言書を作成し、新設の「遺言書保管制度」を活用する方法(「自筆証書遺言」)が追加されました。
「遺言書保管制度」とは、公表された様式に基づいて書いた遺言書(「自筆証書遺言」)を、本人が最寄りの法務局に持参すれば、法務局担当者が、遺言書の書き方等が公表条件に適合しているかを確認してくれ、3,600円の費用を払えば、生涯、または一定期間、安全に管理・保管してくれる制度です。なお、保管中、所定の手続きにより、遺言書の閲覧および内容の変更を行うことができます。
2.遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を受けなければなりません。「検認」とは、家庭裁判所が相続人に対して遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書を開封し、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。
「検認」に関しては、
・今回の「遺言書保管制度」を活用した「自筆証書遺言」は、交付される「遺言書情報証明書」を提示することによって、裁判所の「検認」は不要となります。
・公証人に依頼して作成され、管理・保管された「公正証書遺言」も、交付される「遺言書情報証明書」を提示することによって、「検認」は不要となります。
・本人が自由に作成し、保管されていた「遺言書」は、家庭裁判所の」「検認」が必要であり、「検認」により適正と判断されると「検認済証明書」が発行されます。かかる手続き後、遺言の執行が可能になります。なお、「検認」を受けないで開封すると、罰金が課されるとともに、遺言の執行はできません。
3.「自筆証書遺言」に添付する「財産目録」はパソコンで作成しても、証拠書類の写しを添付し作成しても良いことになりましたが、下記事項を厳守する必要があります。
・A4用紙を使用すること
・規定通りの余白を残すこと(向かって左側20mm以上、右側5mm以上、上部5mm以上、下部 5mm以上)
・ページを付けること(例えば、3枚の1ページ目は“1/3 ”とする)          ・各ページの下部に氏名を自書し、捺印すること
4.住居(建物と土地)についての権利が、今般、「配偶者居住権」と「負担付きの所有権」に分けられ、遺産分割の際などに、配偶者が「配偶者居住権」、配偶者以外の相続人が「負担付きの所有権」を1:1の比率で取得することが可能になりました。また、預貯金は、従来通り、配偶者と配偶者以外の相続人が1:1の比率で分割することになります。なお、居住(建物と土地)に対する税金は権利の所有者が支払うことになりますが、完全な所有権とは異なり、人に売ったり、自由に課したりすることができない分、評価額を低く抑えることができます。
例:相続人が妻(配偶者)と子供2人、遺産:自宅(家と土地)2,000万円+預貯金3,000万円の場合
(改正前)妻と子供の相続配分:1:1(2,500万円:2,500万円)
妻:2,500万円(自宅2,000万円+預貯金500万円)
子供:2,500万円(預貯金2,500万円)(2人の子供は均等分割)
(改定後)妻と子供の相続配分:1:1(2,500万円+2,500万円)
自宅:「 配偶者居住権」1,000万円+「負担付きの所有権」1,000万円
  妻:「配偶者居住権」1,000万+ 預貯金1,500万円

子供:「負担付き所有権」1,000万円+預貯金1,500万円
      (2人の子供は均等分割)

(コメント)「改正前」は、妻が自宅を取得する場合は、他の財産の額が少なくなり、「改正後」は、妻が自宅に継続し住居しながら、他の財産の額が増加します。
5.結婚機関が20年以上の夫婦間で自宅(家と土地)が遺贈(遺言によるもの)または贈与(生前契約によるもの)された場合は、遺産分割に於いて遺産の先渡しとして取り扱われなくなり、相続財産の総額からその分減額されなくなりました。
配偶者の妻は、自宅の生前贈与を受けた場合は、結果的により多くの相続財産を得て、生活を安定させることができるようになりました。
6.遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人について、その生活保障を図るなどの観点から、最低限の取り分を確保するする制度ですが、今回の改正により、遺留分を侵害された相続人は、被相続人から多額の遺贈、または贈与を受けた者に対して、遺留分侵害額(不足分)に相当する金銭を請求することができるようになりました(例えば、故人が配偶者がいるにもかかわらず「愛人に遺産をすべて渡す」という遺言書を作成しているとすると、配偶者の遺留分が相続財産の1/2なので、財産の1/2を愛人に対して請求できる)。法定相続人の財産に対する遺留分の割合は下記のように定められています。

相続人遺留分合計配偶者の遺留分子供の遺留分親の遺留分兄弟姉妹 の遺留分
配偶者のみ1/21/2
配偶者と子供1/21/41/4
配偶者と親1/21/31/6
配偶者と兄弟姉妹1/21/2
子供のみ1/21/2
親のみ1/31/3
兄弟姉妹のみ

なお、遺留分及び遺留分侵害額(不足分)の所定の計算法がある(ご要請により、別途説明)。
7.被相続人の死後、生活費用の支払い残額、葬儀費用、相続債務の弁済などの資金需要がある場合、遺産分割前に預貯金の払い戻し(口座からの引き出し)を行うことができるようになりました。
しかし、小口の資金需要については、家庭裁判所の判断を経ないで行うことができますが、比較的大口の資金需要については、債権限度額以内で払い戻しができるようになりました。
債権限度額の計算方法:  
(相続開始時の預貯金債権の額(口座基準)x1/3 x(当該払い戻しを行う共同相続人の法定相続分)

8.被相続人の療養看護等を相続人以外の親族が無償で行った場合には、相続人に対して、金銭の請求ができるようになりました。例えば、夫の親の介護を妻が行った場合、妻(夫の親の財産の相続権はない)は、介護に費やした労力について夫等(親の財産の相続者)に対し相当の対価を請求できるようになりました。
9.成年年齢の引き下げに伴う年齢要件の変更が下記の通り行われました。

改正前「20歳」から、改正後「18歳」に変ったもの改正前「未成年」(20歳以下)が、改正後も「20歳」で維持されたもの
選挙権、被選挙権
契約行為、カード作成、借金等の実施 10年用一般旅券の取得
帰化の要件
性別の取扱いの変更の審判
人権擁護委員・民生委員・社会福祉主事資格
船舶職員、小型船舶操縦者講習実施講師等
喫煙年齢
飲酒年齢
アルコール健康障害の定義
養子をことのできる年齢
障子慢性特定疾病医療費の支給患児の年齢 競馬、競輪、競艇、カーレース勝者投票券の購入年齢等
改正前「未成年者」(20歳以下)から、改正後「未成年者」(18歳以下)に変ったもの改正前「20歳」が、「改正後」も維持されるもの
公認会計士資格
医師、歯科医師、獣医師、薬剤師資格
司法書士、行政書士、社会保険労務士資格
土地家屋調査士資格
分籍
●犯罪者の実名報道 
大型、中型免許等
国民年金の被保険者資格
船長、機関長の年齢
猟銃の所持の許可年齢
特別児童扶養手当支給対象者年齢 
指定暴力団等への加入強要禁止年齢等