~事業場における労働関連用語の一考察~
私たちが『働いている』上で、よく見たり聞いたりする用語があります。当たり前のことと看過せず、ちょっぴりその中身を考えてみると意外な発見があるかもしれません。
第10回:退職金、退職年金のお話
ここ近年、新卒社員の初任給の高騰がよく話題になってますね。実際今の日本社会は超売り手市場。『お金』が人材確保のための大きな武器であることは間違いないでしょう。一方で、新進企業においては、給与は高いが退職金がない、という企業も増えているということです。現代社会は終身雇用という概念が希薄になっていて、転職が当たり前の時代。将来の約束事よりも『今このときの賃金が高い』ほうが若い世代のニーズと合っているということなのだと思います。
それでも、企業としても労働者としても、なんとか退職金は確保したいと考えることは普通のことですよね。そこで退職金を作るための措置を考えていくことになります。企業が一般的に採用しているのは、
(1)中小企業退職金共済制度
(2)確定拠出年金(企業が掛け金を拠出して運用は労働者に委ねる制度)
(3)確定給付企業年金(企業が掛け金を拠出して、将来の給付も企業が約す制度)
というあたりかと思いますが、中小企業にとってはこの『企業が負担する掛け金』というのが非常に重いようで、ある程度の資産や年商がある企業でないと、これらの制度を採り入れることは難しいでしょう。そういうこともあって、事業者が労働者に対してiDeCoを推奨・選択するケースも増えてきています。iDeCoとは個人型の確定拠出年金で、企業が掛け金を拠出するのではなく、労働者個人が掛け金を支払い、自らその運営機関を選択します。民間の保険料等と根本的に異なるのは、掛け金全額が所得控除の対象となるので、税制的には確実に優遇されるという性質があります。
それぞれに一長一短はあるでしょうが、福利厚生面については可能性のあることを労働者に対して、できる範囲で提示していくことも事業者にとって大切な事業運営のひとつであるかもしれません。



