労務コラム④ 教えて梶谷先生

事業場における労働関連用語の一考察

私たちが『働いている』上で、よく見たり聞いたりする用語があります。当たり前のことと看過せず、ちょっぴりその中身を考えてみると意外な発見があるかもしれません。

第4回:健康保険について

 日常的に手元にあるのが当たり前という印象がある健康保険ですが、この保険が私たちの日常に大きな安心感を与えてくれているということに異論がある方はいないでしょう。法人に勤務して概ね週労働時間数が30時間以上の方は必然的に健康保険の被保険者になります。私たちが傷病を発症して医療機関で診療・治療を受ける時、この保険のおかげで自己負担額は本来の医療費の30%で済みます。出産においても、出産手当金や出産手当一時金が公的給付金として支給されますし、私傷病のため労務に服することができずに休業をしなければならなくなっても、被保険者であれば最大で1年6か月間は傷病手当金が支給されます。この傷病手当金は国民健康保険制度にはない健康保険の大きなメリットでしょう。さらに加筆すれば、医療費が月単位で一定額以上になると、被保険者の支払い負担を軽減してくれる高額療養費という制度もあります。普段高い保険料を支払っていても、然るべきときは助けてくれる、それが健康保険なのです。

 配偶者や親族の被扶養者になっている方は、自身での保険料支払いは免除されますが、出産手当金と傷病手当金を除く事項に関しては、被保険者自身と同様の権利が保障されているので、自身の収入を抑えて誰かの扶養になる選択をする場合もあるわけですね。

 ところでこの健康保険ですが、『自己負担額30%』が定着して20年以上も経つのでそれが当たり前だと思っている方も多いのではないでしょうか?この自己負担額の歴史を辿ってみると、1984年までは被保険者自身の自己負担額ゼロやわずかな定額自己負担が課されるという時代が長かったのです。1984年に自己負担額は10%となり、1997年に20%、そして2003年には30%という変遷を経て今日に至っています。人口減少の著しい日本社会、この負担額が40%になる日はそう遠くないのかもしれません。

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