労務コラム③ 教えて!梶谷先生

事業場における労働関連用語の一考察

私たちが『働いている』上で、よく見たり聞いたりする用語があります。当たり前のことと看過せず、ちょっぴりその中身を考えてみると意外な発見があるかもしれません。

第3回:雇用保険について

 労働者を雇用するにあたり、週労働時間数が20時間以上となる場合は雇用保険の資格取得手続きをしなければなりません。雇用保険の最も知られている目的は厚生労働省のHPに書いてあるように、『労働者の生活及び雇用の安定と就職の促進のために、失業された方や教育訓練を受けられる方等に対して、失業等給付を支給する』ことなのですが、雇用保険は単に失業給付のための保険ではなく、労働者の雇用継続や教育機会をサポートする大切な保険制度なのです。具体的には、出産や育児に係る休業に対しては育児休業給付金が支給され、家族の介護のために介護休業を取らなければならない人には介護休業給付金が支給されます。休業に係る給付だけでなく、例えば自己研鑽のために資格試験合格のために講座を受講したりキャリアアップのための勉強をしたりすれば教育訓練給付金が支給されることもあるのです。つまり雇用保険とは、労働者のための公的な福利厚生制度と考えるのが分かりやすいかもしれませんね。

 そして雇用保険は単に労働者個々のためだけにあるのではありません。2020年に初めて猛威を振るった新型コロナウイルスですが、行政指導で営業を一時休止しなければならなかった事業所がたくさんありました。収入がないのにどうやって事業運営を維持するのか?特に労働者の賃金確保は切実な大問題でした。その時、大活躍したのが『雇用調整助成金』でした。事業所が負うべき休業手当の大部分を国が公費で拠出してくれたのです。この助成金の財源は、まさしく雇用保険の保険料で集められた国庫だったのです。しかしこの緊急事態への対処は雇用保険による財源約5兆円を失うことにもなりました。コロナ前の雇用保険料率は労使合わせて6/1000でしたが、現在は15.5/1000に跳ね上がっています。失ったものは補填しなければならいというわけですが、これは様々な事態に備えるためにやむをえないことだと思います。

 働く上で頻繁に耳にする雇用保険ですが、この保険によって多くの労働者が守られているということを、ぜひ心の中に留めておいてください。

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