労務コラム⑪ 教えて梶谷先生

事業場における労働関連用語の一考察

私たちが『働いている』上で、よく見たり聞いたりする用語があります。当たり前のことと看過せず、ちょっぴりその中身を考えてみると意外な発見があるかもしれません。

第11回:社会保険被保険者の適用拡大について

 『社会保険被保険者の適用拡大』と聞いてもピンとこない方も多いでしょう。ご自身の事業所に関係ないことであればそれも当然ですよね。ところが、すべての事業所にとってそうも言っておれなくなってきました。それが今回のお話です。
少なくとも法人で働いている人は、所定の労働時間数が30時間以上あれば健康保険や厚生年金保険などの社会保険が強制適用になりますよね。しかし一定の事業規模がある法人では週所定労働時間が20時間以上あると、雇用形態がパート労働者であっても社会保険の適用者になります。これが適用拡大という制度で、誰かの被扶養者である人は被扶養者という立場を離れ自分で社会保険料を払わなければならなくなります。社会保険料は労使折半で支払うので、事業所にとっても福利厚生費用が増大するわけです。労使ともにあまり歓迎されてはいない制度なのですが法律は法律、仕方ありません。元々この適用拡大制度は2016年に始まったのですが、その時の事業規模要件は労働者数が501人以上の事業所が対象でした。それが2022年には101人以上になり、現在では51人以上になっています。なので採用にあたっては、簡単に20時間以上の労働契約を交わせない事業所も多くあるのです。話はこれで終わりません。政府が出している予定では、この事業所の人数要件は2027年には36人以上、2029年は21人以上、2032年には11人以上となっていき、そしてとうとう2035年には1人以上になるのです。生産人口(15歳~64歳)が著しく低下している現在において、なんとかして社会保険料を徴収していかないと国民の社会保障が担保できなくなってしまうわけですからなんとも悩ましい話です。
参考までにこの社会保険料の料率ですが、令和7年の時点で健康保険は都道府県により若干の差異はありますが約10%、厚生年金保険は18.3%ですよね。日本の高度成長期であった昭和23年のデータを見ましたら、健康保険は4%、厚生年金保険は3%でした。日本の近未来、本当にどうなってしまうのでしょうね。

「教えて!梶谷先生」コラム一覧ページへ