労務コラム 教えて!梶谷先生

~事業場における労働関連用語の一考察~
私たちが『働いている』上で、よく見たり聞いたりする用語があります。
当たり前のことと看過せず、ちょっぴりその中身を考えてみると意外な発見があるかもしれません。

第1回:有期労働契約について

 日本の労働社会は、正規労働者と有期労働契約者の協働によって支えられてきました。有期労働契約者とは期限を定めて労働契約を交わす方のことをいい、常勤的な役割をこなす方もいれば短い労働時間で働く方もいます。もちろん有期労働契約者の中には、配偶者の扶養に入っていたいので、自分の意思でパート労働をされている方もいますが、正社員になりたい、あるいは正社員と同じ待遇を得たいという方も多くいます。平成時代の後半は、この有期労働契約者の処遇について多くの労働争議が展開されました。代表的なものとしては、ハマキョウレックス事件(2019.6.1判決)、大阪医科大学事件(2020.10.13判決)、メトロコマース事件(2020.10.13判決)、日本郵便事件(2020.10.15)などがあり、有期労働契約者の権利を担保するような判例がいくつも提示されました。特に『福利厚生に関わる事項』については、有期労働契約者であることを理由に差別をしてはならないという見解がはっきり印象付けられたのではないかと思います。このコラムの中では詳細を紹介できるスペースがないので、ご興味ある方はぜひネットで検索をしてみてください。
改正パートタイム労働法(中小企業では2021年4月から施行)では、有期労働契約者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれにについて、差別的取り扱いをしてはならないと規定されており、有期労働契約者から求めがあったときは、正規労働者との間の待遇の相違について事業者はきちんと説明をしなければならないとされています。有期労働契約者の働きにより事業運営が回っている事業所も多いはず。それぞれの立場や役割を尊重し合いながら事業所全体の労働環境を向上させていきたいものです。