労務コラム⑤ 教えて梶谷先生

~事業場における労働関連用語の一考察~
私たちが『働いている』上で、よく見たり聞いたりする用語があります。当たり前のことと看過せず、ちょっぴりその中身を考えてみると意外な発見があるかもしれません。

第5回:年次有給休暇について

最近の新卒生の企業を選ぶ条件に、事業所の福利厚生の手厚さが大きなウエイトを占めています。中でも年次有給休暇や特別休暇制度の充実度は欠かせない条件になっているようですね。有給休暇は、本来入社後6か月を経過してようやく取得できる権利なのですが、今や入社と同時に有給休暇が付与される事業所もどんどん増えてきています。現代社会ではそれくらいの労働環境を整えていかないと人は注目してくれないのかもしれません。
ところでこの年次有給休暇、一般的な認識では『自由に休めて給与も貰える日』と考えている人が多いようです。それで間違いではないのですが、本来年次有給休暇の定義は『労働の減免措置』です。なので労働予定のない日には有給休暇をあてる必要はありません。病気で休んだり、レジャーを楽しんだり、労働者は労働をしなくてもこの労働の減免措置により賃金を得られるわけです。『せっかくある権利なのだから有給休暇を使わなければ損だ』という声をよく耳にしますが、私はこの考え方は好きではありません。本来賃金というのは労働の対価として受け取るもの。上述のように目的があって有給休暇を使うことは理にかなっていると思いますが、『使わなければ損だ』という考え方には首を捻ってしまいます。もちろん私見ですので、読み流していただいて結構ですよ。
年次有給休暇には、基準日に10日以上有給休暇が発行された労働者に対し、使用者はその年度内に最低5日間は消化できるように有給休暇の時季指定をしなければならないというルールもあります。元々は有給休暇を取りたくても取らせてくれない、という声に応える法律なのだと思うのですが、私はちょっと疑問符を投じたいです。『自分の責任は自分で果たしたい。無理に誰かに代行してほしくない。』という労働者がいたらどうするんですか?無理に休暇を取らせるという措置は労働倫理に反していませんか?・・と私は労働基準監督署の監督官に問うたことがあります。監督官は『法律は法律です』としか答えられませんでした。例え法律はそうであっても、労働者の労働意欲を尊重することはそれ以上に大切なのではないかと私は思っています。

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