労務コラム⑨ 教えて梶谷先生

~事業場における労働関連用語の一考察~

私たちが『働いている』上で、よく見たり聞いたりする用語があります。当たり前のことと看過せず、ちょっぴりその中身を考えてみると意外な発見があるかもしれません。

第9回:失業給付のお話=その2=
 前回のコラムの後編で、失業給付の制度の例外として、65歳以上の雇用保険被保険者が退職した場合は、失業給付は高年齢求職者給付となり、50日分の基本手当が一時金で支払われるという制度を紹介しましたが、今号では違う例外措置についてのお話です。
 あまり好ましいことではありませんが、事業所としては労働者に対して『どうしても辞めてもらわなければならないこと』もありますよね。その理由は事業所の経営的な理由であったり、労働者自身の能力や勤務態度に問題がある等の理由であったり、様々です。専門用語で、こういう退職理由は『解雇』あるいは『退職勧奨』と言います。労働者当人の意思による退職ではないため、こういうケースの失業給付に関する要件は前号で紹介したそれとは大きく異なります。例えばある人が自己都合で退職する場合の失業給付受給要件は、雇用保険の被保険者期間が12か月以上あることであり、実際に受け取れる給付金は10年未満の勤続であれば基本手当の90日分でしたよね。ところが解雇や退職勧奨で仕事を辞めざるを得ない形で退職する人は、雇用保険の被保険者期間は6か月以上に短縮されます。しかもその方が45歳以上60歳未満であれば、失業給付も90日分ではなく180日分となるのです。通常の退職であれば20年以上働いていた人でも150日分がMAXですから、それだけ解雇や退職勧奨は『重い』退職事由であるわけです。
 また適応障害で出勤できなくなったことを事由として退職勧奨が行なわれることもあります。事業所としてはやむをえない決断となるわけですが、もし1年以上社会保険の被保険者期間がある労働者が、労務不能を理由に健康保険の傷病手当金を受給している場合は、退職後も最長で180日分まで傷病手当の受給が可能ですし、それが終了してから失業給付を受け取れるという特別なルールもあります。意外と皆様の事業所でも起こりうることかもしれないですよ。

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