2023年 健康に関する最新情報

2023年に発表された健康に関する最新情報は下記の通りです。

(1)アルツハイマー病治療新薬「レカネマブ」が2023年9月23日に国内承認され、12月20日から販売が開始され患者への投与が始まりました。

厚生労働省の調査よると、我が国は高齢化に伴い65才以上の認知症高齢者は、2025年に約675万人(約5人に一人)と予測されています。

認知症には、アルツハイマー型、脳血管性型、レピー小体型、前頭側頭型の4種類があり、その中でもアルツハイマー型が全体の約6~7割を占めていおり、65才以上で発症リスクがますます高まる傾向にあります。

アルツハイマー型認知症は、脳内のアミロイドβ(ベータ)と言う異常なタンパク質が脳内に蓄積して脳の細胞が死滅し、脳が萎縮し、記憶障害が現れる症状で、時間や場所がわからなくなる見当識障害、判断能力や言語の理解力の低下などが現れます。

   その進行度は「前期・初期・中期・末期」に分かれ

「前期」では、軽度認知障害(MCI)と診断され、放置すると症状が進行するので、医者と相談して治療することが望まれる。

「初期」では、同じことを何度も尋ねる、日付や曜日がわからなくなるなど、記憶力 が低下するので、生活において周囲の気遣いが必要になってきます。

「中期」では、食事をしたことを忘れる、着替えやお金の払い方がわからなくなる など、日常生活に支障をきたし、サポートを必要とする場面が多くなります。

「末期」では、排便や歩行が困難になり、徐々に寝たきりの生活になって行きます。

治療新薬「レカネマブ」は、上記「前期」の軽度認知障害、又は「軽度の認知症」と診断される段階で投与されるもので、脳内のアミロイドβ(ベータ)に直接働きかけることで神経細胞の破壊を阻止し、認知症状の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることが出来ます。高齢者は、おかしいと思ったら、早期に医者の診察を受けて、どう対処するか決めることをお勧めします。

ただ、新薬「レカネマブ」は使用開始されたばかりであり、実用化に向けて下記の問題を解決することが必要となっております。

①検査費用については、脳内にアミロイドβ(ベータ)が蓄積されていることを確認する必要がありますが、その検査は、現在、下記の2つの方法に限られております、

・放射性薬剤を体内に投与し、分析を画像化し検査を行う「アミノイドPET検査                                      ・局部麻酔を行い、腰に針を刺し、脳脊髄を採取し検査を行う「髄液検査」

上記の「アミロイドPET検査」は、費用が1回当たり約20万円~60万円と高価です。「髄液検査」は保険が適用され、1回当たり約3万円と比較的安価ですが、局部麻酔は身体への侵襲性があります。

②治療費については、新薬「レカネマブ」による治療は、2週間に1回投与し、1年半をめどに継続され、期間が長く生活に影響があります。治療費用は、年間約298万円で、公的保険、「高額医療制度」適用により、外来で年間約14万4443円の負担となります。(米国では、一人当たり年間約380万円の自己負担になっています)。

(2)高齢者の居場所づくり、即ち、「食」を通じた交流支援場所づくり、が各地に広まりつつあります。

一人暮らしの高齢者が増加する中、地域の高齢者が集まり、飲食しながら交流する「シニア食堂」が各地に広まりつつあります。

東京都は今年度(令和5年度)、シニア食堂の事業推進に乗り出しました。高齢者の孤立を防ぎ、心身の健康推進につなげてもらうことが狙いです。同事業では、シニア食堂1か所当たり最大65万円を支給し、会食に加え、健康講座の開催や多世代交流の場なども補助対象に含めると言うことです。すでに、目黒区、荒川区、奥多摩町に交付されました。

目黒区は区立特別養護老人ホームなどで「高齢者会食サービス」を開催しており、1食400円で、現在6か所で週1~2回実施しております。

荒川区では、2事業者が食堂を運営しており、1食400円で月4回開催しております。

奥多摩町では、65才以上の高齢化率が50%を超える町として、2つの自治会が20人以上が飲食や交流を楽しんでおります。

今後、この活動が全地域に広まり、高齢者の生活が支援されることが望まれます。

(3)政府は2023年12月22日、現行の紙の健康保検証を2024年12月2日に廃止すると決定しました。

廃止日から1年間は、紙の保険証を並行して使用できますが、1年後は「マイナンバーカード」のみを保険証として使用することになります。まだ「マイナンバーカード」を取得していない高齢者はできるだけ早く取得する必要があります。

(4)介護施設の住居費が、2024年8月から、月1800円引き上げられます。

厚生労働省は、12月27日、昨今の光熱水費の高騰を踏まえ、特別養護老人ホー ム(特養)などの介護施設の住居費を月1800円程度引き上げる方針を発表しました。特養の月々の住居費は、「ユニット型個室」は約6万1000円、相部屋(多床室)は約2万6000円となっていますので、それらが月1800円程度引き上げられると言うことです。

施設利用者は、住居費の他に、サービス利用料(1割負担)、食費を負担する必要がありますが、働く人の最低賃金がアップされること、食材費アップにより食費負担が2024年度から30円アップすることが決まっていますが、介護サービス料金の値上げに備えて、生活設計をしっかり見直す必要があります。

(5)新型コロナウイルス感染症の感染症分類が、結核などと同様の「2類」相当から、季節性インフルエンザなどと同様の「5類」へ2023年5月8日付けで移行しました。

①政府が関与した仕組みから自己の自主的仕組みに変更となりました。       ②マスクの着用は個人判断となり、2023年10月より、ワクチン接種、治療薬や入院医療費も公的負担から自己負担に変更となりました。              ③ワクチン接種は、2024年から定期接種となり、費用は一部自己負担となります。④新型コロナウイルス治療費の自己負担上限は、1割負担の方は3000円、2割の方は6000円、3割のかたは9000円となります。高額医療制度が適用されます。

文  責: 高橋 昭浩(当法人職員) 健康管理士上級指導員          参考資料:  「ほすぴ」 発行者 日本成人病予防協会、その他公開情報