健康の話

   体内に異物を侵入させない身体の仕組み

私たちの身体には、外部から細菌、ウィルス等の異物の侵入を防ぐための三つの防御層が設けられています。

★一つ目は、皮膚です。下記の種類があります。

・身体の全体を覆う皮膚
・鼻、のど、目、肛門、尿道口のうすい粘膜
・足の裏・手のひらのような硬い皮膚
これら皮膚はそれぞれの役割を有する皮膚細胞が集まって創られており、
・細胞同士が密着し外部からの侵入を困難にしています。
・更に、粘液を発出し、細菌、ウィルスを囲い込み侵入を防ぐとともに保温、保湿、及び免疫細胞への情報伝達を行っています。例えば、

サラサラ:口の中の汚れを洗い落とす粘液、よだれ、なみだ等
ねばねば:皮膚の保温、乾燥を防ぎ、異物の親友を防ぐ粘液、鼻水
べたべた:足裏の尾後、粘液便
ぬるぬる:気管支,食道の粘膜の保護、異物の侵入排除、

・また、織毛(気管支)、線毛(のど)、鼻毛をはやして、粘膜の保護、及び粘液に囲い込まれた細菌、ウィルス、それらを付着した埃の侵入をブロックし、外へ送り出す働きをしています。

★二つ目は、皮膚を突破した細菌、ウィルスを迎え撃つのは、生まれつき体に備わっている免疫細胞(自然免疫)です。侵入した細菌、ウィルスの約6割を攻撃して、排除すると言われています。

★三つ目は、特定の病原菌、ウィルスのために培養したワクチンを予防接種して、自然免疫に特定の免疫機能をつけたり、免疫機能を強化することによって(獲得免疫),侵入きた特定の細菌、ウィルスを攻撃し、排除します。

★上記の三つの防御層を突破した細菌、ウィルスにより発病が診断された場合、治療により対応します。細菌については抗生物質による治療を行い、抗生物質が効かないウィルスについては、抗炎症薬、抗ウィルス薬、中和交代薬を適切に投与し、水分管理、栄養管理を行い自然観察を行う、重症化する場合は、人工呼吸、ECM(エクモ)を行う。結果として、命が失われることもあります。

上記の体の仕組みを理解すると、以下の行為が体の仕組みを如何に助けるかがお分かりいただけると思います。
手洗い、うがいによって細菌、ウィルスを洗い落とすこと、入浴またはシャワーにより体を清潔に保つこと
計画される予防注射の接種を必ず受けること
例えば、風邪をひきそうになったり、伝染病にかかりそうになったら、適切な治療を遅滞なく受けること。

文責:高橋 昭浩(当法人職員、健康管理士上級指導員)
参照資料:「ほすぴ」(日本成人病協会 発行)、その他公開情報


2024年 健康に関する最新ニュース

1)2024年の日本の総人口が発表された。

総務省は2024年10月1日時点での日本の総人口推計を発表した。
総人口は前年から89万人減少した。外国人の日本国籍取得者の増加人数を算入すると55万人の減少となり、総人口は1億2380万2千人となった。これによって、人口減少は14年連続となり、かつ減少幅は過去最大になった。

特に、出生者数が死亡者数を下回る「自然減」は18年連続となった。
また、75才以上の人口は2077万7千人で全体に占める割合は16.8%と過去最高を更新し、一方、15歳未満は1383万人で11.2%と過去最低を更新した。
政府による、人口減に歯止めをかける有効な施策が早急に期待されるところである。

2)百日咳の流行が急拡大している。

 激しい咳が続く百日咳の流行が拡大している。百日咳に罹った人は、2024年は4054人で、2023年の1009人の4倍強になった。また、2022年の499人の約8倍となった。

更に、2025年3月31日時点において、既に4771人と2024年の一年間を上回っている。この原因は、新型コロナの発生によりコロナワクチン接種が集中的に行われたため。百日咳のワクチン接種の実施が疎かになったためである。

今後、子供に対する百日咳ワクチン接種が急がれる。

3)新たな感染症危機に備え「国立健康危機管理研究機構」が発足した。

 新型コロナ感染症の経験を活かし、新たな感染症危機などに備える新組織「国立健康危機管理研究機構(JIHS、ジース)」が発足した。今後起こり得る重大な感染症危機への対応能力が強化された。今後における迅速かつ的確な感染危機対応が注目される。

4)ips細胞を使った治療法の開発が目立った。

 大阪大学、新興企業「クオリブス」は、ips細胞から心臓の筋肉(心筋)の細胞シートを作って心臓病患者に移植する治療法を発表し、細胞シートの製造販売承認を厚生省に申請した。

 京都大学病院は、ips細胞から膵臓でインスリンを放出する細胞を作って数センチのシートに加工し、糖尿病患者の下腹部に数枚移植する手術を行った。患者の経過は良好で既に退院した患者もいる。今後5年間経過を観察し、安全性や効果の検証を行う。

 大阪大学は、ips細胞から小さな幹細胞の塊「ミニ肝臓」を作ることに成功し、肝不全のラットに移植した結果、生存率が向上した。新しい治療法の開発につながることが確認され、将来における人間向けの治療法の確立が期待される。慶応大学も別の方法で「ミニ肝臓」の作成に成功した。

 京都大学は、ips細胞から作った神経細胞をパーキンソン病(注)の患者の脳に移植し、再生治療の効果を確認した。患者によっては介護がいらなくなるという驚異的な効果もあった。
(注)パーキンソン病とは、中脳のドーバミンを産生する神経細胞の変性又は細胞死によってドーバミン神経細胞が減少することによって発症、進行する病気である。
この病気では、体の動きに障害がおこる運動症状(手がふるえる、良くころぶ、指がふるえる、歩くときふらつく、身体がこわばる等)だけでなく精神症状を含む非運動症状(認知症、統合失調症)も併せて起きる。
日本では、1000人に1~1.5人程度の割合で患者がいると言われている。50才以上の患者が多いが、近年、40才以下の若者も発症している。若者発症の原因は、ストレスの増加や極端な運動不足によると言われている。