エスペラント語との出会い、あれこれ(講座修了の一会員より)

 エスペラント語を学び始めて、8月時点で、まだ10ヶ月です。2020年の10月から始めました 。
  数年前、花巻に出かけました。花巻といえば、宮澤賢治です。東北新幹線の新花巻駅で降りて、釜石線に乗り換えました。目的は現代の「銀河鉄道」、JR東日本が運行するSL銀河に乗るためです。趣向を凝らした賢治ワールドを体感できるとなれば出かけないわけにはゆきません。車内にはプラネタリュームやギャラリーがあったり、テーマに沿った企画展示を見ることができます。まるで動く工芸博物館のようです。
 在来線の新花巻駅のプラットホームで汽車が到着するまで数分間待っていました。ふと見慣れぬ横文字に目が留まりました。駅名の看板にローマ字で併記された駅名にShin-hanamakiとではなくStelaroとあります。これは明らかに英語ではありませんし、西語?伊語?それとも葡語?かしらんと想像が頭の中を駆け巡りました。乗車して一駅一駅通り過ぎてゆくときにも看板にはそれぞれ別個の見慣れぬ横文字が表記されていました。帰宅して調べてわかったことですが、釜石線の各駅にはエスペラント語のことばが名付けられています。それぞれのエスペラント語表記は、駅名をエスペラント語に翻訳したもの以外に、賢治作品との関連から創造的に名付けられたものもあります。たとえば、松倉駅はLa Suda Krucoです。『銀河鉄道の夜』でサウザンクロス・南十字星という名前で出てきますね。
 わたしは旅の醍醐味を経験しました。そして実社会で生きたことばとしてエスペラントと出会うことができました。そういえば、イーハトーヴォは、賢治、喜善、稲造といったエスペランティストらとゆかりのある土地柄です。花巻という緑の風の吹くドリームランドでの思いがけない奇遇が、こうしてひとつのつぼみ、一人のエスペラント語学習者を生んだのでした。
                         (2021-09-18)
 (C) 2021 SER (杉並エスペラント会会報 Sazanko n-ro 109 より転載)
(注)「駅名エスペラント」「エスペラント駅名」で検索してみてください。